戦国武将の旗印 デザインに込められた様々な意味とは
当時の合戦シーンを描いた絵を見ると、至る所に旗が立っていますよね。
中でもずらずらと立ち並んでいるのが、旗印です。
この旗印も色々なデザインがあって、武将ならではの個性が出てたりするんですよね。
それでは、戦国武将の旗印について検証していきましょう。
戦のときの旗印の役割
旗印は、誰が軍を率いているのか一目で分かるようにした目印で、何本も立てられました。
強い武将なら、「俺がここにいるぞ!」と相手を威圧するメリットもありました。
そうでなくても、戦で活躍した場合、論功行賞の際に「ああ、あいつが活躍したな」と評価されたというわけです。
当時は戦目付(いくさめつけ)という合戦の状況を見届ける役目の武士がいたので、旗印を見て活躍ぶりを判断していたのですね。
だからこそ、目立ってナンボというところもあったのではないかと思います。
有名武将のデザインに込められた意味
それでは、有名武将の旗印をご紹介しましょう。
織田信長:「永楽通宝(えいらくつうほう)」
織田信長の旗印は、永楽通宝という通貨を縦に3つ並べたものです。
永楽通宝とは、中国の明王朝第3代皇帝・永楽帝の時代(15世紀初め)から造られたという通貨で、室町時代に日明貿易によって日本に入ってきました。
信長がなぜこれを使ったのか理由ははっきりしていませんが、彼は楽市楽座という施策を行ったり、撰銭令(えりぜにれい)を出して粗悪な銭と良質な銭の流通状況を安定させたりと、経済政策に力を入れていました。そのためではないかとも考えられます。
豊臣秀吉:「総金」
秀吉の旗印で有名なのは、羽柴秀吉時代から使用していた「総金」と呼ばれるものです。
金色の旗印で文字はなく、何か所にも横に切れ込みが入ったものでした。風を受けると切れ込み部分がひらひらとして、華麗な印象だったはずです。派手好みの彼らしさが表れているようです。
後に、「五七の桐(ごしちのきり」という豊臣氏の家紋入りのものも使ったようです。これは秀吉が関白に就任した際、天皇から授けられた名誉ある家紋でした。これを掲げるとき、秀吉はさぞかし鼻高々だったことでしょう。
徳川家康:「厭離穢土欣求浄土(えんりえどごんぐじょうど)」
家康は家紋のいわゆる「葵の御紋」も旗印に使いましたが、有名なのは「厭離穢土欣求浄土」と書かれたものです。
この意味は、戦国の世で穢れた国土を厭って離れ、浄土を願い求めるというものです。
そして、私は仏のご加護によって事を成すであろう、すなわち平和な世を造るのだということが込められていると考えられます。
天下を密かに伺い続けていた家康の心情を表すかのような旗印ですね。
武田信玄:「疾如風徐如林 侵掠如火不動如山」
「風林火山」として有名な信玄の旗印ですが、実は「風林火山」という名前は当時は使われておらず、現代の創作ではないかという見方が多数を占めています。
この言葉は「疾(はや)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如し。侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如し」と読みます。
中国の古代の兵法家・孫武(そんぶ)による兵法書「孫子(そんし)」から採りました。孫子の中では、ここでは戦における軍の進退について述べています。
信玄がなぜこれを使用したか明確な理由は残されていませんが、彼の用兵術において「孫子」が大きな意味を成していたのでしょう。
上杉謙信:「毘」、「龍」
謙信の旗印は2つ有名なものがあります。
「毘」は、毘沙門天の「毘」です。謙信は闘いの神である毘沙門天を深く信仰し、かつ自分が毘沙門天の生まれ変わりであると称しました。そのためにこの「毘」という旗印を使ったのです。
また、「龍」の旗印は、「懸り乱れ龍(かかりみだれりゅう)」と呼ばれ、全軍突撃の際に掲げられました。龍は、魔を退散させ人々の煩悩を断ち切る不動明王を意味しています。
どちらも仏教に関わるものであり、仏門に入っていた謙信が使うのも納得です。
真田信繁(幸村):「六文銭(ろくもんせん)」
真田の六文銭は、真ん中に穴が開いた銭が6つ並んでいる旗印です。
この六文銭は、三途の川の渡し賃として死者の棺に入れるものでした。
すなわち、「自分たちは死ぬ用意ができているから、恐れることなく戦う」という意思表明だったのです。
石田三成:「大一大万大吉(だいいちだいまんだいきち)」
戦国武将の旗印の中でも、最もインパクトがある旗印と言ってもいいかもしれません。
しかし、これに込められた意味は実に深いもので、「天下のもと、1人が万人のため、万人が1人のために命を注げば、皆が幸せとなり平和な世になるだろう」ということなのです。「大」とは天下を意味しています。
理想に燃えた三成らしいなと思います。
他にも、自分の名字の一文字を掲げた井伊直政や(「井」の一文字)、家紋である桔梗を水色の布地に染め抜いた明智光秀など、シンプルでありながらとても目立った旗印がありました。
ちなみに、馬印(うまじるし)というものもありますが、これは大将の居場所を知らせるために掲げるもので、たくさん立てたものではありません。
馬印で有名なのは秀吉のもので、金色の瓢箪がたくさんついている「千成瓢箪(せんなりびょうたん)」がこれに当たります。
まとめ
旗印は武将によって違い、オリジナリティに溢れています。
シンプルなものやカッコイイもの、漢字に多くの意味が込められたものなど、その意味を知っていくと、武将の性格まで見えてくるように思えますね。